National geographic 2020/1

  • 雑誌National geographicの2020年1月号の特集は「痛み その正体と治療法を探る」でした。
  • その雑誌のwebsiteにweb magazineとして愛知医大痛みセンター牛田教授のインタビューがありました
  • 非常に示唆に富む内容で以下にキーポイントを転載しますが、詳細は元記事を参照ください
  • 第1回  慢性的な痛みに悩む人がぜひ知っておきたいこと
    • 日本で3ヶ月以上の慢性疼痛を持っている人は人口の約20%,2000万人以上と推定される。運動器に限ると16%
    • 痛みは慢性化するほど、心理的、社会的な要因が強くからまってくる
    • 痛みが続いて、不安、恐怖を感じて、痛くないように動かさないようにしていると、骨や筋肉が萎縮し、関節が固くなる。結果として、全体の機能が落ち、別の部位に新しい痛みが出たりする。不眠、抑うつがおこる。悪循環が始まると、断ち切ることが難しくなる
    • 「痛み刺激が加わったときの痛覚と、痛みは違うということです。痛い感覚があっても、辛くなかったら痛みではないんですよ」
  • 第2回  「痛いところ」を治しても痛みが消えると限らないわけ
    • 神経伝達の段階からすでに感覚と情動にかかわるルートが特定されている
    • 「痛みで苦しむ患者さんは、感覚よりも情動のほうで苦しんでいるのは間違いないんです。例えばある人に蹴られて痛いっていっても、蹴った人が好きな人であればうれしいということすらあるわけですから。その場合は、痛いって思っても、苦しんでないですよね」
    • 我々の中で問題となってくるのは、人によって痛みの受けとめ方は随分変わってくることなんです。同じ経験をしても、ある人にとっては大したもんでないかもしれないですけども、ある人にとってはすごく大変なことだったりします。
    • 怪我が完全に治っても、脳が痛みを記憶しているような場合もあって、以前は、『痛みをなくすには悪いところを治せばいい』という『生物医学的モデル』で治療をしていたんですが、実際には心理や認知の問題をも含めた悪循環の中で、慢性の疼痛がひどくなっていくわけですから、今では、痛みが心理的な問題や社会環境によって大いに左右されることを織り込んだ『生物心理社会モデル』に依拠しています。
  • 第3回  痛いと得をする「疾病利得」で痛みが定着することも
    • 慢性の痛みをこじらせていくと、感覚器などからの痛みの刺激がなくても、いや、それを最初に感受する脳の部位の活動が低下していてすら、強烈な痛みを感じうる仕組みがもう脳の中に確立してしまっていることになる。なんとも恐ろしい話だ。
    • 「まず、『侵害刺激』があると『痛み行動』が出ますよね。そして、『痛み行動』に報酬が出ると、『痛み行動』が強化されるということですね。痛いと訴える、痛そうな顔をする、じっとしている。そうすると、優しくしてもらえたり、お金が出たりすると。そうやって『痛み行動』が強化されて、抜け出せなくなるサイクルがあるんです」
  • 第4回  「痛みの悪循環」を招く「恨みと怒り」
    • 痛み行動を強化して、痛みにばかり意識を向けてしまうと、本当に痛みが大きなものになっていく。これも「気のせい」「気持ちの問題」というのを越えて、認知の問題だったり、脳神経レベルの根拠が見つかりつつあることだそうだ。
    • 痛みに通じる回路を自ら強化してしまうのは、なにも「疾病利得」だけではない。牛田さんは、別の要素として「恨みや怒り」
    • 痛みにとらわれ、すべてがそれを中心にまわってしまう。不安や恐怖、それにともなって、うつや不眠に至り、「使わないことによる痛み」や、様々な機能障害、依存などにはまっていく。どこかで悪循環を断ち切らないと本当につらい。
  • 第5回 長く続く厄介な痛みの治療で大切なこと
    • 薬が効かなかった人たちが多く集まってくるので、減薬をまず検討することも多くなる。その上で、理学療法士がかかわるような運動療法や、臨床心理士がかかわるようなカウンセリングや、疼痛マネジメントの患者教育(「慢性疼痛教室」というものがあるそうだ)や、精神科的な認知行動療法も行うこともあるし、整形外科的な手術や小侵襲(身体的負担が少ない)の外科的治療を検討することもある。
    • 「痛みを完全になくすことはできなくても、自分なりの主体的な目標を持って生きていけるようにするのが目標です。本当に、痛いのをゼロにするのは難しいんですが、それと付き合って行けるようにできれば、というのが大切なことだと思っています」
    • ずっと前に見つけられているべきだった疾患がスルーされてしまっている場合がしばしばあるという。
  • 第6回 これからの痛みの医療と“お化け屋敷論”
    • 「僕はよく『お化け屋敷論』って言うんですけど、どこから何が出てくるか分からないからお化け屋敷なんであって、上からみたお化け屋敷ほど間抜けなものはないぞ、と。痛みについても、不安が大きく作用するので、これは怖くないというのが分かったら、そんなに怖くないわけです」
    • ごく逆説的に響くかもしれないが、慢性疼痛の治療の第一目的は、痛みを減らすことではなく、患者がみずから「痛みの管理」をできるようにすることだ。もちろん、痛みを減らすためのあらゆる努力を行うわけだが、かといって鎮痛薬で一日中眠っているような状況は、目標として適切ではない。結局、痛みとつきあいつつ、生活の質や、日常生活での動作をできうる限り向上させるというのが、最重要なことだという。
    • 「痛み」というのは、本人にとっては本当に切実なのに、いざ捉えようとすると、つくづく、不定形のアメーバのようで、常に形を変えていく小魚の群れのようだ。
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